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換気設備工事とは?目に見えない“空気の通り道”が暮らしを守る─換気設備の裏側へ

  • 執筆者の写真: 設備 中嶋
    設備 中嶋
  • 6月23日
  • 読了時間: 5分

私たちが毎日過ごす家、職場、学校、病院や店舗──どんな建物にも欠かせない「空気」。当たり前のように吸って、吐いて、感じることはあっても、そこにどれだけの「設備」が働いているかを意識する人は多くありません。その“当たり前”を裏から支えているのが、「換気設備工事」です。

換気設備とは何か?

換気設備とは、建物内の空気を入れ替えるための仕組み全般を指します。外から新鮮な空気を取り入れ、室内の汚れた空気や湿気、臭気、二酸化炭素などを屋外に排出することで、快適で健康的な環境を保ちます。たとえば…

・トイレの臭いがこもらないように

・料理中の煙がキッチンに残らないように

・病院の待合室で感染リスクを抑えるために

・オフィスで眠気やだるさを防ぐために

これらすべては、「適切な換気」がされているからこそ実現しています。また2020年以降のコロナ禍により、オフィスや飲食店でも「換気の質」が大きく注目されるようになりました。「1時間に2回以上の換気」などの基準も登場し、設備の更新や追加が急増しました。


換気の種類と仕組み

換気には主に「自然換気」と「機械換気(強制換気)」の2種類があります。


・自然換気

窓や換気口を通じて、自然の風や温度差を利用して空気を入れ替える方法です。コストがかからず、省エネである反面、外気の状況(風向き、気温差、PM2.5など)に左右されやすく、コントロールが難しいという欠点があります。


・機械換気

ファン(送風機)やダクトなどの機械装置を使って強制的に空気を出し入れする方式です。現在の建物では、ほとんどがこの「機械換気」設備を備えています。

機械換気には3つの方式があります:

  • 第1種換気:給気も排気も機械で行う(病院やビルなどの密閉性の高い建物向き)

  • 第2種換気:給気のみ機械、排気は自然(クリーンルームなど)

  • 第3種換気:排気のみ機械、給気は自然(住宅や小規模施設向き)

換気設備工事が必要になるタイミング

では、どんなときに「換気設備工事」が必要になるのでしょうか?


1. 新築・リフォーム時

最も基本的なタイミングです。建物の設計段階でどの方式を導入するかを決め、それに合わせたダクトや換気扇、吸気口、排気口を設置していきます。

住宅の場合、近年では「24時間換気システム」の導入が義務化されており、気密性が高い住宅では必須です。


2. テナントの入れ替え時

飲食店や美容室、クリニックなどでは、前テナントの業種と異なる用途で使用する際に、換気の強化が必要となります。たとえば、物販店だった場所にカフェを開業する場合、厨房から出る熱気や煙に対応した排気設備の設置が求められます。


3. 法改正や保健所指導への対応

建築基準法や労働安全衛生法の改正、あるいは保健所からの是正指導により、換気設備の改修や追加工事が発生するケースもあります。


4. 老朽化や能力不足による更新

20年以上前の建物では、換気能力が現在の基準に達していないことが多く、機器の劣化や異音、換気不足による結露やカビの発生などが見られます。これらのトラブルは、健康被害や建物自体の損傷にもつながるため、早めの対処が必要です。


換気設備工事の流れ

一般的な工事の流れは以下の通りです:

  1. 現地調査 既存の設備の確認、配管のルート、天井裏や壁内のスペース、電源位置などを調査。

  2. 設計・計画 必要な換気量を計算し、どの方式を採用するか、どこに吸排気口を設けるかなどを設計します。

  3. 機器選定 建物の用途・面積・使用人数に応じて、換気扇やダクトファン、熱交換器(全熱交換器など)を選定。

  4. 施工 壁や天井に開口し、ダクトや機器の設置、電気配線などを行います。騒音対策や美観にも配慮します。

  5. 試運転・調整 風量や騒音、フィルターの機能などを確認。必要に応じて風量バランスの調整を行います。

  6. 引き渡し・説明 使用方法やメンテナンスについて説明し、完了となります。


換気設備工事の注意点

  • 騒音や振動の配慮 特に集合住宅やビルでは、隣接する住戸や店舗への影響が懸念されます。ダクトの防音処理やファンの設置場所に注意が必要です。

  • 美観への配慮 飲食店や美容室などでは、インテリアにマッチした外観を求められるため、露出配管のデザイン性や塗装なども重要です。

  • 保守性・メンテナンス性 フィルターの掃除やファンの点検を想定した配置にしておかないと、数年後に問題が起きやすくなります。

  • 電気容量の確認 既存設備に追加する場合、電気容量が足りないとブレーカーが落ちる原因になるため、事前の確認が必須です。


換気設備と「健康」「快適性」の深い関係

換気設備は単なる“空気の出し入れ”にとどまらず、私たちの「体調」や「集中力」「睡眠の質」にまで影響を及ぼします。特に現代の高気密・高断熱住宅では、窓を開けずに過ごす時間が長いため、換気設備が担う役割はますます重要です。また、花粉・PM2.5・黄砂などの大気汚染物質をフィルターで除去しながら換気する「全熱交換型換気システム」は、アレルギーや喘息を持つ方にとってもありがたい存在です。さらに、湿度コントロール機能を持つシステムもあり、カビやダニの発生抑制、快適な睡眠環境の維持にもつながります。


まとめ

目に見えず、音もなく、当たり前のようにそこにある「空気」。その空気が清らかで心地よいとき、私たちは安心し、リラックスし、深く息を吸い込むことができます。換気設備工事は、そんな“空気との対話”を可能にするための静かな舞台裏の仕事です。だからこそ、信頼できるプロに任せたい。今もし、あなたの身の回りに「空気が重い」「匂いがこもる」「カビが出る」と感じる場所があるなら、それは“換気が助けを求めている”サインかもしれません。見えない場所だからこそ、丁寧に。感じる空気だからこそ、正確に。換気設備工事は、あなたの暮らしを内側から支える「空気の職人」のしごとなのです。

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